若桜木虔メール通信添削講座 体験談 その36

角川春樹小説賞 受賞体験記 鳴神 響一さん 

 5月中旬のよく晴れたある日。待っていた電話は、すぐ鳴りました。
「鳴神さんのお宅ですか……。選考会が終了いたしました」
 後に担当編集になって下さったTさんのトーンの落ちた声に、目の前がホワイトアウトしかけました。ところが、Tさんの声が、突然、明るく華やかに変わりました。
「おめでとうございます! 鳴神さんが受賞されました!」
 気づいてみると、受話器を握りしめながら、何度も何度も頭を下げていました。
(やった! ようやくスタートラインに立つことができた!)
 それは十年前から待っていた電話でした。

  小説を書き始めてすぐ、2005年に僕は若桜木先生のご指導を受け始めました。やがて、いくつかの賞で予選通過できるようになったのに、いつまでも受賞に届きませんでした。途中、勤めが忙しくて中断期間も少なくありませんでしたが、十年掛けて実った夢でした。
 今回の受賞作は、初期に先生にご指導頂き、三分の一ほどで中断していた作品を引っ張り出して、構成も大きく変えて仕上げたものです。
 ところが、元の原稿の拙いことと言ったらありません。自分の文章に舌打ちしながら、元の部分の改稿作業を続けていました。数年間、先生にご指導頂けたことで、自分の筆力は格段に向上していたのです。これはもう、若桜木マジックとしか言いようがありません。

 もう一つ。青松書院から『このミステリーがすごい』!大賞の落選作、『悲しみのマリアは暁を待つ』を出版して頂いたことも深く感謝しております。
 先日、角川春樹事務所のPR誌『ランティエ』に掲載する対談が行われました。対談のお相手は文芸評論家で江戸川乱歩賞や日本ミステリー文学大賞新人賞などの予選委員も務めていらっしゃる細谷正充さんです。ところが、部屋に入ってみると、細谷さんの前のテーブルに『悲しみのマリア――』が置かれているではありませんか。
「なかなかおもしろかった……ミステリーもいけるんじゃないんですか」
 購入して下さり、お読み頂いた上に、ありがたいお言葉まで頂きました。若桜木先生のお力で、ふつうなら、世に出ない落選作も、一つの実績として残すことができたのです。
「自費出版じゃないんですよね……」と、Tさんも営業担当のMさんも首を捻っていました。経済的負担なく、落選作を書籍にして頂けるありがたさは、受賞してみると、痛いほどわかります。これが二つ目の若桜木マジックです。

 本当に、先生にはいくら言葉を重ねても、感謝の気持ちをお伝えできません。
 受賞するための心構えや、小説作法を学ぶ上での詳細なノウハウは、ほかの受賞者の方々が丁寧に書いていらっしゃいます。僕も皆さまと同じ考えなので、あえて書きません。
 ですが、ただ、一言。ひたすらに若桜木先生を信じて、忠実にご指導に従うことが早道だと思います。
 角川春樹事務所は受賞者をとても大切にして下さる版元さんです。書籍編集部の皆さまも校閲担当の方も営業の方も、高いプロ意識を持って、受賞作を世に送り出そうとして下さいます。とくにミステリー以外のジャンルを書いている方は、応募できる新人賞が少ないこともありますので、ぜひ、チャレンジしてみて下さい。
 もちろん、ご自分の作品が受賞傾向に向いているかどうか、若桜木先生にお伺いになってからですよ。

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