若桜木虔メール通信添削講座 体験談 その23


角川春樹小説賞に応募して『我儘な弟子』 風花千里さん


「角川春樹小説賞に応募したいのですが、いかがなものでしょうか」
「角川春樹小説賞は再開されたばかりの賞なので、傾向がわかりません」
 若桜木先生に師事してから一年半。書きかけの二作目の小説をどこに応募しようかと迷っていた時のやり取りです。
 普段から師匠の意見を聞くより先に、自分の願望を口にしてしまう我儘な弟子は、この時も〈敬愛する横溝正史をリバイバルヒットさせた角川春樹に自分の作品を読んでもらいたい!〉という気持ちでいっぱい。作品の傾向がどの賞と合っているかなんて、考える余裕もありませんでした。
 まったく困った弟子です。実を言えば、一作目も書き上げてから半年以上も放置した後、先生には事後報告で応募したという前科もあります。
 先生には、この作品だったら別の賞のほうが向いているとお考えがあったかもしれません。「春樹賞と近いところでは小説現代新人賞もあります」とのアドバイスもいただきました。
 が、自らの願望に抗しきれず、結局、応募先を角川春樹小説賞に決めてしまいました。

 しかーし! ここからが大事なところです。失礼な弟子が先生のアドバイスを聞き流して応募先を決めた後も、先生のご指導はいささかも変わることなく続きました。いえ、決める前よりさらに厳しく、細かく指導していただいたように思います。おそらく応募に向けて、作品をきっちり仕上げさせようとの配慮だったのでしょう。
 私は時代小説で応募しましたが、苦手な武家の職制や仕来たりの部分では、泣きたくなるくらいビシビシご指導いただきました。また、作品中、登場人物に大阪弁を喋らせる個所があるのですが、方言チェックのために、先生のお弟子さんの中から大阪の方をご紹介いただきました。まさに「痒いところに手が届く」「至れり尽くせり」のご指導でした。

 私が考えるに、先生の指導法には二つの大きな特徴があります。
「添削、チェックは要点のみ。だらだらした説明は一切なし」
 メールの文面も添削の内容も、非常に淡々としていて、悪くいえば愛想がない。でも、その素っ気なさがいいんですね。
 言い回しや登場人物の視点のブレ、間違った時代考証等、直さなければいけない要点だけが、すっと頭に入ってくる。小説作法の極意を素早く身につけさせるメソッドを、先生はすでに確立されているのではないかと思っています。
「何度、間違えても、その都度、辛抱強く指摘してくださる」
 常に要点のみのチェックですが、一回で身につかなくても大丈夫。間違えたら、何回でも正してくださいます。
 私のような物覚えの悪い弟子にはなんてありがたい心遣い。癖になっている言い回しや、間違って覚え込んでいた文字遣いなど、何度直されたかわかりません。それでも先生は嫌味ひとつ仰らないで、忍耐強く教えてくださるのです。

 そして昨年11月。上記のごとき先生の熱血指導を受け、締切ぎりぎりになりましたが、無事、角川春樹小説賞に応募しました。
 もしかするとライトノベル向きの賞かもしれないという懸念があったので、応募総数487作中、一次通過の19作に残った時には、やったーと叫ぶと同時に、ほっとしました。
 先生にご連絡すると「プロが何人か応募しているから、意外に激戦かもしれない」というお返事。
 自分でも、最終章がバタバタになってしまい、結末に難ありと感じていたのですが、案の定、最終選考4作の中には残れませんでした。
 角川春樹に自作を読んでもらうという目論見は、残念ながら先延ばしになってしまいました。ただ、今年も第4回の募集があるので、再度応募しようと企んでいます。
 現在は、三作目の長編を書き終えたところです。今回は先にアドバイスしていただき、初めて先生お勧めの賞へ応募しました。

 さて、まだ結果は出ませんが、もし一次通過以上に進めたらどうしましょう。先生は「そらみたことか。今まで私のアドバイス通りにしないからです」とか仰るかしら(いや、絶対仰いませんね)。
 でもね、何と罵倒されてもいいんです。万が一先へ進めたら、先生に「へへー、お許しくだせえまし。仰せのとおりでごぜえやした」と申し上げ、平伏したいと思います。

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