草紙:題目
シリーズを紹介した、日本経済新聞による記事でございます。

掲載:2002年12月1日(日)日本経済新聞

活字の海で
百円ショップに「本」 新刊続々、出版社は警戒
 何から何まで百円で売る「百円ショップ」が、本まで扱い始めた。推理小説にロマンス小説。辞典に地図、実用書まで品ぞろえは増えている。
 力を入れているのは最大手の大創産業(広島県東広島市)。昨年十月に「ダイソー・ミステリー・シリーズ」(全三十点)を刊行。これまでに日本人女性の海外での恋を共通テーマにしたロマンス小説のシリーズ(同)、永井豪、里中満智子らを含むコミック(三十点が二度)、辞典(二十点)、ガーデニングの本(二十点)などを出した。先月末には、生活情報紙「プチハピ」も創刊した。
 同社に取材を申し込むと「個別の商品には詳しくお答えできない」(広報部)とのこと。取扱商品が約六万種類あり、しかも月平均七百種類の新商品が加わる。本もごく一部ということらしい。
 調べてみると、小説の多くは、書き下ろしの独自企画だ。コミックは、ほとんどが他社で絶版になった本の復刊だった。
 ミステリーのいくつかを読んだ。各二百二十二ページで、二時間余りで読める。ページ数をそろえているせいか、やや粗っぽい感もあるが、新刊のエンターテインメント作品と大差があるようには思えない。ただし、一部に、ページの差し違いがあり、誤植も散見された。
 出版社は戦々恐々としている。石ノ森章太郎『化粧師』のほか数点の絶版漫画が再刊された小学館では「既存の出版流通の仕組みでは、どうやっても百円では採算割れになる。読者に価格の混乱を招きかねない」(コミック販売部の田中洋輔部長)と懸念する。
 ただ、新品同様の古書を低価格で販売する新古書店を巡る問題の時と異なるのは、発表の場を与えられた著者の側に一定の支持があることだ。
 ミステリーシリーズの一点『W殺人の謎』の著者、若桜木(わかさき)虔氏は「地域の書店が減る中で、全国二千四百あるダイソーの店舗網は読者に本を手にとってもらう上で大きい」とみる。
 既に出版社とコンビニエンスストアの間で始まっているように、メーカーと流通が共同で商品を開発する時期が迫っているのかもしれない。
(文化部 松岡弘城)

この頁は『筆客商売』の一部です。